サーキュラーエコノミーとは?注目される背景や企業事例をご紹介!

サーキュラーエコノミーとは?注目される背景や企業事例をご紹介!

「サーキュラーエコノミー」という言葉を耳にする機会が増えました。しかし、その正確な意味や重要視される理由、具体的な実践方法が分からないと感じていませんか。

これは、これまでの「作って、使って、捨てる」という一方通行の経済活動に代わる、新しい循環型の経済システムです。本記事を読めば、サーキュラーエコノミーの基本的な考え方が分かります。

さらに、私たちの生活やビジネスへの影響や、持続可能な社会の実現に向けて何をすべきかまで深く理解できます。

 

 

サーキュラーエコノミーとは?

サーキュラーエコノミーとは?

 

サーキュラーエコノミー(循環型経済)とは、製品や原材料、資源の価値を可能な限り長く保全・維持し、廃棄物の発生を最小限に抑える経済システムです。従来の一方通行の経済モデルからの転換を目指す考え方であり、地球環境の保護と経済成長の両立を実現する鍵として世界的に注目を集めています。

このセクションでは、サーキュラーエコノミーの根幹をなす考え方について、従来のモデルや類似する概念との違いを交えながら、その基本を解説します。

 

従来の「リニアエコノミー」との違い

従来型の経済は「リニアエコノミー(直線型経済)」と呼ばれています。天然資源を採掘して製品を「作り」、それを「使い」、最終的には「捨てる」という一方通行の流れが基本です。

このモデルは大量生産・大量消費を前提としており、経済成長を促進してきました。その一方で、資源の枯渇、大量の廃棄物発生、環境汚染といった深刻な問題も引き起こしています。

対照的にサーキュラーエコノミーは、設計段階から製品の長寿命化や修理のしやすさ、リサイクルを前提とします。使用後も製品や素材を資源として循環させ、環境への負荷を最小限に抑えようと試みます。

 

「3R」との関係性

サーキュラーエコノミーと関連が深い言葉に「3R(リデュース・リユース・リサイクル)」があります。3Rは廃棄物の発生を抑制し、資源を有効活用するための重要な活動ですが、あくまで廃棄物が発生する前提の対策です。

一方、サーキュラーエコノミーは経済活動の入り口である製品設計の段階から、廃棄物を出さない仕組みを目指します。これは、より包括的で大規模な経済システムの概念です。3Rの取り組みはサーキュラーエコノミーを実現するための重要な要素の一つと言えるでしょう。

しかし、サーキュラーエコノミーが目標とするのは、ビジネスモデルやサプライチェーン全体を変革し、社会システムそのものを循環型へ移行させる点にあります。

 

 

サーキュラーエコノミーが注目される背景は3つ

サーキュラーエコノミーが注目される背景は3つ


近年、世界中の政府や企業がサーキュラーエコノミーへの移行を急いでいます。その背景には、単なる環境意識の高まりだけではなく、経済的・社会的な要因が複雑に絡み合っているからです。

なぜ今、これまでの経済モデルを見直し、サーキュラーエコノミーという新しい仕組みが求められているのでしょうか。ここでは、その主な3つの背景について掘り下げて解説します。

 

1.地球環境問題の深刻化

最大の理由は、気候変動や生物多様性の喪失、資源の枯渇といった地球規模の環境問題の深刻化です。従来のリニアエコノミーは、有限な地球の資源を大量に消費し、温室効果ガスや廃棄物を排出し続け、成り立ってきました。

このままでは地球環境が持続不可能であるという危機感が世界的に共有されています。廃棄物を新たな資源と捉え、自然資本への負荷を最小限に抑えるサーキュラーエコノミーが、根本的な解決策として期待されているのです。

 

2.経済的な機会の創出

サーキュラーエコノミーは、環境問題への対策であると同時に、新たな経済的価値を生み出す機会にもなります。資源を循環させると、原材料価格の変動リスクを低減し、サプライチェーンの安定化を図れます。

また、製品の修理やアップグレード、シェアリングサービスといった新しいビジネスモデルが生まれ、新規市場の開拓や雇用創出につながるでしょう。企業にとってはコスト削減だけでなく、競争優位性を確立し、持続的な成長を達成するための重要な戦略となっています。

 

3.SDGsとの密接な関連

2015年に国連で採択された「持続可能な開発目標(SDGs)」も、サーキュラーエコノミーが注目される大きな要因です。SDGsは17のゴールを掲げていますが、特に「つくる責任 つかう責任(ゴール12)」や「気候変動に具体的な対策を(ゴール13)」「海の豊かさを守ろう(ゴール14)」などは、サーキュラーエコノミーの理念と直接的に結びついています。

資源の有効活用や廃棄物削減を目指すサーキュラーエコノミーへの取り組みは、多くのSDGs目標達成に貢献します。そのため、企業や国家の重要な責務と位置づけられています。

 

 

サーキュラーエコノミーの根幹をなす原則は3つ

サーキュラーエコノミーの根幹をなす原則は3つ


サーキュラーエコノミーの概念を世界的に広めたエレン・マッカーサー財団は、その実現に向けた具体的な指針として3つの原則を提唱しています。これらの原則は、単にモノをリサイクルするだけでなく、経済システム全体を根本から見直すための道しるべとなります。

ここでは、サーキュラーエコノミーを理解する上で不可欠な、その根幹をなす3つの原則について詳しく解説します。

 

1.廃棄物と汚染を出さない設計にする

第一の原則は、経済活動のあらゆる段階、特に製品の設計段階から廃棄物や汚染を生まないようにする点です。これは「Design out waste and pollution」という考え方に基づいています。

具体的には、製品の耐久性を高めたり、修理や分解がしやすい構造にしたり、有害な化学物質を使用しなかったり、といった工夫が求められます。問題が発生してから対処するのではありません。

そもそも問題の原因となる要素を、最初からシステムに組み込まない予防的なアプローチが重要です。

 

2.製品と原料を使い続ける

第二の原則は、一度作った製品や利用した原料を、その価値が最も高い状態で可能な限り長く使い続ける点にあります。これには、製品の修理(リペア)、再製造(リマニュファクチャリング)、再利用(リユース)といった様々なループが含まれるでしょう。

どうしても製品としての再利用が難しい場合でも、素材レベルでリサイクルを行い、新たな製品の原料として循環させます。これにより、新たな天然資源の投入を最小限に抑え、サプライチェーン全体での資源効率を最大化します。

 

3.自然システムを再生する

第三の原則は、人間活動が自然環境から収奪するだけでなく、積極的に自然システムを再生していく点です。例えば、農業において土壌の健康を回復させる農法を採用したり、再生可能エネルギーを利用して生態系への負荷を減らしたり、といった取り組みが挙げられます。

これは、単に環境への悪影響を減らす(Do less bad)だけではありません。環境に良い影響を与える(Do more good)という、より積極的な関わり方を目指すものです。

経済活動と自然の再生を両立させ、真に持続可能な社会の実現を目指します。


 

企業がサーキュラーエコノミーに取り組むメリットは4つ

企業がサーキュラーエコノミーに取り組むメリットは4つ


サーキュラーエコノミーへの移行は、環境への貢献という側面に加え、企業経営に多くの具体的なメリットをもたらします。コスト削減やリスク低減に留まらず、新たな事業機会の創出やブランド価値の向上など、その効果は多岐にわたるでしょう。

ここでは、企業がサーキュラーエコノミーを経営戦略に取り入れると得られる、主要な4つのメリットについて解説します。

 

1.新たなビジネス機会の創出

サーキュラーエコノミーは、従来の「作って売る」モデルから脱却し、多様なビジネスモデルを生み出します。製品のレンタルやリース、サブスクリプションといった「製品のサービス化(PaaS)」や、修理、メンテナンス、アップグレード事業の拡大がその代表例です。

また、使用済み製品から回収した素材を販売するなど、これまで廃棄物とされていたものが新たな収益源に変わる可能性もあります。これにより、企業は新たな市場を開拓し、収益構造を多角化させることが可能になります。


なお、アップサイクルについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。

関連記事:アップサイクルとは?リサイクルとの違いやメリット・デメリットを詳しくご紹介します! – CLALAFOR

 

2.資源価格変動リスクの低減

従来のリニアエコノミーでは、事業活動が新規の天然資源の投入に大きく依存しています。そのため、国際情勢や市場の需給バランスによって引き起こされる資源価格の高騰や供給不安が、直接的に経営リスクとなっていました。

サーキュラーエコノミーでは、使用済みの製品や素材を資源として循環させるため、外部からの新規資源への依存度を下げられます。これにより、サプライチェーンの安定性を高め、予測不能なコスト上昇のリスクを効果的に低減させることが可能です。

 

3.企業価値・ブランドイメージの向上

環境問題やSDGsに対する社会的な関心が高まる中、サステナビリティへの取り組みは企業の評価を左右する重要な要素となっています。サーキュラーエコノミーに積極的に取り組む姿勢は、環境や社会に配慮した企業であるというポジティブなメッセージを発信できます。

これは、消費者や投資家、地域社会に対するアピールになるでしょう。これにより、ブランドイメージや社会的信頼性が向上し、ESG投資の呼び込みや優秀な人材の獲得においても有利になると期待されます。

 

4.顧客との関係性強化

製品を一度販売して終わりにするのではなく、修理やメンテナンス、アップグレード、回収といったサービスを通じて、顧客と長期的な関係を築ける点も大きなメリットです。このような継続的な接点は、顧客のニーズや製品の使用状況に関する貴重なデータを収集する機会にもなります。

そのデータを製品開発やサービス改善に活かすと、顧客満足度をさらに高め、ロイヤルティの強い顧客層を育成できます。

 

 

サーキュラーエコノミーの導入における課題は2つ

サーキュラーエコノミーの導入における課題は2つ


サーキュラーエコノミーへの移行は多くのメリットをもたらす一方で、その実現には乗り越えるべき課題も存在します。従来のリニアエコノミーを前提として構築されてきた社会・経済システムを転換するには、技術的なハードルや経済的な負担が伴うのです。

ここでは、企業がサーキュラーエコノミーを導入する際に直面しやすい、代表的な2つの課題について解説します。

 

1.初期コストと既存システムの転換

サーキュラーエコノミーに対応したビジネスモデルを構築するには、多くの場合、初期投資が必要となります。例えば、製品を回収するための新たな物流網の整備や、リサイクルや再製造を行うための設備投資、循環を前提とした製品の再設計などが挙げられます。

長期的にはコスト削減につながるとしても、短期的な資金負担が導入の障壁となるケースは少なくありません。また、長年慣れ親しんだ生産プロセスや販売方法、組織体制を根本から見直す必要があり、その転換には大きな労力と時間を要します。

 

2.サプライチェーン全体の協力体制

サーキュラーエコノミーは、一社の努力だけでは完結しません。製品のライフサイクル全体で資源を循環させるためには、原材料の調達先から部品メーカー、販売店、そして最終的に製品を回収・リサイクルする業者まで、サプライチェーンに関わるすべてのステークホルダーの連携が不可欠です。

各企業の足並みが揃わなかったり、業界全体で共有できる回収・再生のインフラが未整備であったりすると、循環のループが途切れてしまいます。業界の垣根を越えた協力体制をいかに構築するかが、成功の鍵を握ります。

 

 

【国内外】サーキュラーエコノミーの企業事例5選

サーキュラーエコノミーは、もはや単なる理念ではなく、世界中の先進的な企業によって実践されています。様々な業界で、廃棄物を価値ある資源へと変え、持続可能なビジネスモデルを構築する動きが加速中です。

ここでは、国内外の代表的な企業の中から、サーキュラーエコノミーの理念を具現化している5つの先進的な事例を紹介します。


1.Patagonia(パタゴニア)

1.Patagonia(パタゴニア)

参考:Patagonia(パタゴニア)


アウトドアウェアブランドのパタゴニアは、早くから環境問題に取り組み、サーキュラーエコノミーを牽引する企業として知られています。同社は「Worn Wear」というプログラムを通じて、製品の修理サービスを提供し、顧客が衣類を長く使えるよう促しているのです。

また、着られなくなった自社製品を回収し、修繕して再販したり、リサイクルして新たな製品の素材として活用したりしています。これは、製品を長く使い続けるというサーキュラーエコノミーの原則を体現した取り組みです。


2.IKEA(イケア)

2.IKEA(イケア)

参考:IKEA(イケア)


世界的な家具メーカーであるイケアも、サーキュラーエコノミーへの移行を積極的に進めています。不要になったイケアの家具を買い取り、修繕してアウトレットで再販する「家具買取りサービス」をグローバルで展開中です。

さらに、製品設計の段階から、再生可能素材やリサイクル素材を積極的に使用しています。製品の寿命が尽きた後も資源として循環させやすいデザインを追求しており、将来的にはすべての製品を循環型にする目標を掲げています。


3.アサヒグループホールディングス

3.アサヒグループホールディングス

参考:アサヒグループホールディングス


日本の飲料・食品メーカーであるアサヒグループは、事業活動で発生する副産物や廃棄物の資源化に取り組んでいます。特に、製造過程で発生する酵母細胞壁から、化粧品原料や健康食品素材を開発・販売している事例は特徴的です。

また、使用済みプラスチックをケミカルリサイクル技術によって再生し、新たなプラスチック製品の原料として活用する実証実験も進めています。サプライチェーン全体での循環を目指す活動です。


4.日本マクドナルド

4.日本マクドナルド

参考:日本マクドナルド


日本マクドナルドでは、店舗で使用した調理油(廃食油)を全量回収し、バイオディーゼル燃料や飼料、塗料などにリサイクルする取り組みを長年続けています。さらに、顧客が店内で使用したトレイを回収し、新たなトレイに再生する「トレイ to トレイ」のリサイクルも推進中です。

これにより、廃棄物の削減と資源の有効活用を両立させ、身近な店舗からサーキュラーエコノミーの実現に貢献しています。


5.Apple(アップル)

5.Apple(アップル)

参考:Apple(アップル)


テクノロジー業界の巨人であるAppleは、製品に使用する素材の循環に力を入れています。iPhoneなどの製品に、リサイクルされたアルミニウムやレアアースを積極的に採用しているのです。

また、分解・素材回収ロボット「Daisy」を自社開発し、使用済みiPhoneから効率的に資源を回収する体制を構築しました。製品の設計から回収、再生に至るまで、クローズドループ(閉じた循環)の実現を目指す先進的な取り組みです。

 

 

サスティナブルなスローウエアブランド「CLALAFOR」のご紹介

サスティナブルなスローウエアブランド「CLALAFOR」のご紹介


「CLALAFOR」は、美しい瀬戸内海の港町で、2022年に生まれたばかりのサスティナブルなスローウエアブランドです。人体や環境に有害な化学物質を使用しておらず、倉敷染という繊維加工の安全認定も取得しています。

また、トウモロコシから作られた生分解性のリサイクルポリエステル素材のニットを使用しており、持続可能なファッションの選択肢として、快適なスローウエアを提供しています。CLALAFOR(クララフォル)はこちら

 

 

サーキュラーエコノミー とはでよくある3つの質問

サーキュラーエコノミー とはでよくある3つの質問

 

最後に、サーキュラーエコノミー とはでよくある質問について解説します。それぞれの詳しい内容についてみていきましょう。

 

質問1.日本の政府はどのような取り組みをしていますか?

日本では、環境省や経済産業省が中心となり、サーキュラーエコノミーへの移行を推進しています。「循環経済ビジョン」を策定し、2030年までに循環型経済関連ビジネスの市場規模を80兆円以上に拡大するという目標を掲げました。

具体的には、プラスチック資源循環促進法のような法整備や、企業のリサイクル設備導入への補助金、再生材利用の促進など、多角的な支援策や規制を通じて社会全体の変革を後押ししています。

参考:令和7年版 環境・循環型社会・生物多様性白書|環境省

 

質問2.サーキュラーエコノミーとサステナビリティの違いは何ですか?

サステナビリティ(持続可能性)とは「環境・社会・経済」の3つの側面において、将来の世代の利益を損なうことなく現在の世代のニーズを満たす社会を目指す、非常に広範な概念です。

一方、サーキュラーエコノミーは、そのサステナビリティを実現するための具体的な「経済モデル」や「手段」の一つと位置づけられます。特に経済活動における資源の循環と廃棄物の削減に焦点を当てており、サステナブルな社会を構築するための重要なアプローチと言えます。

 

質問3.具体的なビジネスモデルにはどのようなものがありますか?

サーキュラーエコノミーのビジネスモデルは多様ですが、代表的なものに以下の5つが挙げられます。


  • 循環型サプライチェーン: 再生可能素材やリサイクル素材を利用して製品を作る

  • 回収とリサイクル: 使用済み製品を回収し、再資源化する

  • 製品寿命の延長: 修理やアップグレードを通じて製品を長く使えるようにする

  • シェアリング・プラットフォーム: モノを所有せず共有することで稼働率を高める

  • 製品のサービス化(PaaS): 製品をモノとして売るのではなく、機能やサービスとして提供する(例:照明のサブスクリプション)

 

 

まとめ

まとめ


サーキュラーエコノミー(循環型経済)は「作って、使って、捨てる」リニアエコノミーからの脱却を目指す考え方です。資源を循環させ続け、環境負荷の低減と経済成長の両立を図る新しい経済のあり方として注目されています。

その背景にあるのは、深刻化する環境問題や資源枯渇のリスク、そしてSDGs達成への要請です。エレン・マッカーサー財団が提唱する3原則に基づき、世界中の企業が新たなビジネスモデルの構築を進めています。

この大きな変革の波は、今後のビジネスや社会のスタンダードになっていくでしょう。サーキュラーエコノミーは、持続可能な未来を築くための重要な鍵となるのです。

なお「CLALAFOR」では、トウモロコシから作られた生分解性のリサイクルポリエステル素材のニットを使用し、サスティナブルなスローウエアを提供しています。⇒CLALAFOR(クララフォル)はこちら