「サステナブル」や「SDGs」という言葉を耳にする機会が増え、環境に配慮した製品への関心が高まっています。その中でも注目されているのが「リサイクルポリエステル」です。
しかし、具体的にどのような素材で、なぜ環境に良いのか、よく知らないという方も多いかもしれません。
この記事では、リサイクルポリエステルの基本的な意味から、製造方法、メリットとデメリット、そして主な用途までを分かりやすく解説します。環境問題への貢献と、私たちの暮らしとの関わりを理解していきましょう。
リサイクルポリエステルとは?
リサイクルポリエステルとは、その名の通り、一度使用された製品を再生して作られたポリエステル素材です。主に、回収されたペットボトルや、製造工程で出た繊維くずなどが原料です。
本来であれば廃棄されるものを資源として再利用し、環境への負荷を低減します。このようなサステナブルな素材として、近年ファッション業界をはじめ、様々な分野で注目を集めています。
通常のポリエステルは石油を原料として作られますが、リサイクルポリエステルは新たな石油資源を使いません。そのため、有限な資源である石油の使用量を削減できます。
さらに、新規にポリエステルを製造する場合と比較して、CO2排出量やエネルギー消費量を大幅に抑制できるという大きな利点があるのです。
なお、アップサイクルとリサイクルの違いについては、こちらの記事で解説しています。
関連記事:アップサイクルとは?リサイクルとの違いやメリット・デメリットを詳しくご紹介します! – CLALAFOR
リサイクルポリエステルが注目される2つの理由

環境意識の高まりとともに、リサイクルポリエステルは多くの企業や消費者から注目されています。その背景には、地球環境の保全と、持続可能な社会の実現に向けた世界的な潮流があるからでしょう。
ここでは、リサイクルポリエステルが特に重要視される2つの大きな理由について解説します。
環境負荷の低減
リサイクルポリエステルが注目される最大の理由は、環境負荷の低減に大きく貢献する点です。通常のポリエステルは、原料である石油の採掘から製造プロセスに至るまで、多くのエネルギーを消費します。
加えて、大量の二酸化炭素(CO2)を排出します。一方で、リサイクルポリエステルは使用済みのペットボトルなどを再利用するため、新たな石油資源への依存を減らせるのです。
これにより、製造過程におけるエネルギー消費量を約30%〜50%削減し、CO2排出量も大幅に抑制できるとされています。廃棄物の削減と資源の有効活用を両立できる、地球にやさしい素材なのです。
SDGsへの貢献

参考:SDGs
2015年に国連で「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されました。このSDGsへの関心の高まりも、リサイクルポリエステルの普及を後押ししています。
SDGsは17のゴールを掲げていますが、リサイクルポリエステルの利用は特に「ゴール12:つくる責任 つかう責任」や「ゴール14:海の豊かさを守ろう」に直結します。廃棄されるプラスチックごみを減らし、資源を循環させるのは、持続可能な生産と消費のパターンを確保するために不可欠です。
また、海洋プラスチックごみの主要な原因の一つであるペットボトルをリサイクルするのは、海洋生態系の保全にも繋がります。
リサイクルポリエステルの主な製造方法は2つ

リサイクルポリエステルは、原料となる使用済みペットボトルや繊維くずを、再び繊維として生まれ変わらせて作られます。その製造方法には、大きく分けて「マテリアルリサイクル」と「ケミカルリサイクル」の2つの手法が存在します。
マテリアルリサイクル
マテリアルリサイクルは、回収したペットボトルなどを物理的に処理して再生する方法です。まず、回収したペットボトルを洗浄し、不純物を取り除きます。
その後、細かく粉砕してフレーク状にし、それを高温で溶かして再び糸状に紡ぎ出し、ポリエステル繊維を製造します。この方法は、化学的な分解工程を含まないため、ケミカルリサイクルに比べて製造コストが低く、CO2排出量も少ないという点がメリットです。
ただし、原料に付着した不純物を完全に取り除くのは困難です。そのため、リサイクルを繰り返すと品質が徐々に低下する可能性があります。
ケミカルリサイクル
ケミカルリサイクルは、回収したポリエステル製品を化学的に分解し、分子レベルにまで戻してから再重合させて新しいポリエステルを製造する方法です。この方法では、原料を一度化学的に初期の状態に戻すため、不純物や色素などを完全に取り除くことができます。
その結果、石油から新規に製造されるバージンポリエステルとほぼ同等の品質を持つ、高純度なポリエステル繊維を再生できます。
何度も繰り返しリサイクルできるという大きな利点がありますが、高度な技術と設備が必要なため、マテリアルリサイクルに比べて製造コストが高くなる傾向です。
リサイクルポリエステルを利用する3つのメリット

環境に配慮した素材として注目されるリサイクルポリエステルですが、その魅力は環境面だけにとどまりません。通常のポリエステルが持つ優れた機能性を維持しつつ、私たちの生活にも多くの利点をもたらします。
ここでは、リサイクルポリエステルを利用して得られる具体的な3つのメリットについて詳しく見ていきましょう。
1.通常のポリエステルと変わらない品質
リサイクルポリエステルは「リサイクル」という言葉から品質が劣るのではないかと懸念されがちですが、実際にはバージンポリエステルとほとんど変わらない品質を誇ります。特にケミカルリサイクルによって再生されたものは、分子レベルで再生されるため、新品と同等の強度や風合いを持ちます。
耐久性や速乾性、形状記憶性といったポリエステル本来の優れた特性を損なわず、衣類や雑貨など幅広い製品に活用できるでしょう。環境への配慮と高い品質を両立できる点が、大きなメリットです。
2.高い耐久性と速乾性
リサイクルポリエステルは、原料が再生されたものであるにもかかわらず、ポリエステル本来の強みである高い耐久性を維持しています。摩擦に強く、繰り返し洗濯しても劣化しにくいため、スポーツウェアやユニフォーム、バッグといった、タフな使用環境が想定される製品に非常に適しているでしょう。
また、吸湿性が低く、水分を素早く蒸発させる速乾性も兼ね備えています。これにより、汗をかいてもべたつきにくく、快適な着心地を保てます。洗濯後も乾きやすいという利便性も、日常生活において嬉しいポイントです。
3.シワになりにくく手入れが簡単
形状記憶性に優れている点も、リサイクルポリエステルの大きなメリットの一つです。シワになりにくく、型崩れしにくいため、アイロンがけなどの手間が省け、日常のお手入れが非常に簡単です。
旅行や出張などで衣類を畳んで持ち運ぶ際にも、シワを気にせず着用できます。この特性は、シャツやスカート、パンツなどのファッションアイテムはもちろん、カーテンやテーブルクロスといったインテリア製品においても重宝されます。
忙しい現代人のライフスタイルに合った、扱いやすさと機能性を兼ね備えた素材と言えるでしょう。
リサイクルポリエステルを利用する3つのデメリット

環境面や機能面で多くのメリットを持つリサイクルポリエステルですが、一方でいくつかの課題や注意すべき点も存在します。製品を選ぶ際や使用する上で知っておきたいデメリットを理解した総合的な判断が大切です。
ここでは、リサイクルポリエステルが抱える3つのデメリットや注意点について解説します。
1.製造コストの高さ
リサイクルポリエステルの製造には、使用済み製品の回収、選別、洗浄、そして再生加工といった多くの工程が必要です。特に、新品同等の品質を実現できるケミカルリサイクルは、高度な化学処理技術と大規模な設備を要します。
そのため、石油から新規にポリエステルを製造する場合よりもコストが高くなる傾向があります。この製造コストが製品価格に反映され、バージンポリエステルの製品と比較して割高になる場合があるでしょう。
しかし、技術の進歩や普及拡大に伴い、将来的にはコストの低下が期待されています。
2.マイクロプラスチック問題
これはリサイクル素材に限った話ではありませんが、ポリエステル繊維全般の課題としてマイクロプラスチックの発生が挙げられます。ポリエステル製の衣類を洗濯すると、摩擦によって微細な繊維が抜け落ちます。
これが下水を通じて河川や海洋へ流出してしまい、海洋汚染の一因として生態系への影響が懸念されているのです。リサイクルポリエステルも例外ではなく、この問題は依然として残っています。
洗濯の際は、マイクロプラスチックの流出を抑制する専用の洗濯ネットを使用するなど、消費者一人ひとりの配慮が求められます。
3.リサイクルサイクルの限界
現在主流であるマテリアルリサイクルには、リサイクルの回数に限界があるという課題があります。物理的な処理を繰り返す過程で、繊維の強度が落ちたり、不純物が混入したりして、徐々に品質が低下するためです。
何度も無限にリサイクルできるわけではなく、いずれは廃棄せざるを得ないタイミングが訪れます。一方で、ケミカルリサイクルは品質を維持したまま半永久的なリサイクルが可能とされていますが、まだ技術的に発展途上であり、コスト面での課題も残っています。
持続可能な循環を実現するためには、リサイクル技術のさらなる向上が不可欠です。
リサイクルポリエステルの主な用途

リサイクルポリエステルは、その優れた機能性と環境配慮の観点から、私たちの身の回りの様々な製品に活用されています。バージンポリエステルと遜色ない品質を持つため、用途は多岐にわたります。
代表的な用途は、Tシャツやフリース、アウター、スポーツウェアなどの衣料品です。耐久性や速乾性が求められるファッションアイテムやユニフォームに最適です。
また、バッグやリュック、エコバッグ、シューズといった服飾雑貨にも広く使われています。さらに、インテリア分野でもその活用は進んでおり、カーテンやカーペット、クッション、寝具などにもリサイクルポリエステルが使用されています。
なお、エシカルファッションについては、こちらの記事で詳しくご紹介しています。
関連記事:エシカルファッションとは?取り入れるメリット・デメリットや選ぶ際のポイントをご紹介! – CLALAFOR
サスティナブルなスローウエアブランド「CLALAFOR」のご紹介

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リサイクルポリエステルでよくある3つの質問

リサイクルポリエステルについて関心を持つ方が増える一方で、まだまだ疑問点も多いかもしれません。ここでは、よくある質問を3つご紹介します。
質問1. リサイクルポリエステルは肌に悪いですか?
リサイクルポリエステルが直接肌に悪いわけではありません。その化学的な組成は、通常のポリエステルと基本的に同じです。
ただし、ポリエステル素材全般の特性として吸湿性が低いため、人によっては汗で蒸れやすく、肌への刺激を感じる場合があります。これはリサイクル素材だからというわけではなく、ポリエステル素材そのものの特徴です。
敏感肌の方やアレルギーが心配な方は、綿などの天然繊維と混紡された製品を選ぶか、肌着で調整するのをおすすめします。
質問2. 家庭での洗濯方法は通常と違いますか?
家庭での洗濯方法は、通常のポリエステル製品と何ら変わりありません。基本的には洗濯表示の指示に従ってください。ポリエステルは丈夫な素材ですが、熱に弱い性質があるため、乾燥機の使用や高温でのアイロンがけは避けるのが賢明です。
また、デメリットでも触れたマイクロプラスチックの流出を少しでも防ぐために、洗濯ネットに入れて洗うのがおすすめです。これにより、繊維の摩耗を抑え、衣類を長持ちさせる効果も期待できます。
質問3. なぜペットボトルから服ができるのですか?
とても不思議に思えますが、実は飲み物が入っているペットボトルとポリエステルの服は、どちらも「ポリエチレンテレフタレート(PET)」という同じ種類のプラスチックからできています。いわば「親戚」のような関係です。
そのため、ペットボトルをリサイクルして服を作れます。具体的には、回収したペットボトルをきれいに洗浄し、細かく砕いてチップ状にします。
このチップを高温で溶かし、とても細い穴から押し出して冷やし固めると、長い一本の糸が完成するのです。この糸を使って布を織ると、私たちの着るTシャツやフリースなどに生まれ変わります。
まとめ

リサイクルポリエステルは、使用済みのペットボトルなどを再生して作られる、環境に配慮したサステナブルな素材です。新たな石油資源の使用を抑え、CO2排出量やエネルギー消費を削減し、地球環境負荷の低減に大きく貢献します。
その製造方法にはマテリアルリサイクルとケミカルリサイクルの2種類があり、それぞれに特徴があります。品質面でも、耐久性や速乾性、シワになりにくいといったポリエステル本来の優れた機能性を備えており、バージンポリエステルと遜色なく使用できるでしょう。
ファッションアイテムからインテリアまで幅広い製品に活用されており、私たちの生活を支える身近な存在になりつつあります。コストやマイクロプラスチックなどの課題はありますが、リサイクルポリエステル製品を選ぶのは、持続可能な社会の実現に向けた私たちにできる身近なアクションの一つです。
なお「CLALAFOR」では、トウモロコシから作られた生分解性のリサイクルポリエステル素材のニットを使用し、サスティナブルなスローウエアを提供しています。⇒CLALAFOR(クララフォル)はこちら