廃棄物をただ再利用するだけではない、新たな価値を生み出す「アップサイクル」で、資源の有効活用と同時にビジネスチャンスを広げている日本企業が増えています。
本記事では、食品ロス削減からアパレル、楽器製造まで、様々な業界で活躍する10社の先進的なアップサイクル事例を詳しくご紹介します。アップサイクルのメリット・デメリット、リサイクルやリメイクとの違いも解説し、循環型経済への理解を深めましょう。
アップサイクルとは?

アップサイクルは、使われなくなった物や廃棄されるはずだった物に創意工夫を加え、新たな役割や魅力を持たせる取り組みです。例えば、古い家具を加工してインテリア雑貨に変えるなど、素材の個性を活かして価値を再構築します。
不要品を単に処分するのではなく、持続可能な形で再利用する方法として、環境問題への関心が高まる中、多くの注目を集めています。
アップサイクルと似た用語との違い

アップサイクルは、廃棄物に新たな価値を付加して別の製品に生まれ変わらせることです。似た言葉との違いを解説します。
リサイクルとの違い
リサイクルは、不要となった製品をいったん原材料に分解し、別の製品を作る仕組みです。資源として再出発させる点が特徴で、限りある資源を有効活用する手段として広く取り入れられています。
例えば、使用済みの紙を再びパルプに戻し、新たな紙製品に作り直すといったプロセスがこれにあたるでしょう。アップサイクルとの違いは、素材を分解するか否かという点にあり、目的はどちらも環境負荷の軽減にあります。
関連記事:アップサイクルとは?リサイクルとの違いやメリット・デメリットを詳しくご紹介します!
ダウンサイクルとの違い
ダウンサイクルとは、役目を終えた製品に手を加えて再利用する点ではアップサイクルと似ていますが、元の製品よりも価値が下がる形で使われるのが特徴です。たとえば、着古した服を掃除用の布にしたり、古新聞を簡易的な容器として使ったりするのが代表例です。
資源の再活用という点では意義がありますが、品質や機能が低下するため、持続可能性の観点ではアップサイクルとは異なるアプローチといえます。
リメイクとの違い
リメイクは、既存の製品に加工を加え、異なる用途のアイテムへと変える行為を指します。たとえば、着なくなったシャツをバッグに仕立て直すなど、形や機能を変えて再利用する方法です。
アップサイクルと似た側面もありますが、リメイクは必ずしも元の価値を高めるとは限らず、価値が下がる場合でもリメイクと呼ばれます。そのため、創造性を活かしながらも、価値の変化には幅がある点が特徴といえるでしょう。
アップサイクルのメリット・デメリット

アップサイクルは、環境保護に貢献しながら、企業活動にもプラスの影響を与える可能性を秘めています。しかし、その一方で、いくつかの課題も存在します。アップサイクルのメリットとデメリットを解説します。
メリット
アップサイクルには、地球環境の保護やコスト削減など、多くのメリットがあります。アップサイクルのメリットを大きく分けると、環境面、経済面、社会面の3つの側面があります。
環境面では、廃棄物を新たな資源として活用することで、限りある地球の資源を有効活用できるでしょう。経済面では、材料費の削減などコストカットにつながるだけでなく、新たなビジネスチャンスの創出も期待できます。
アップサイクルによって生まれた商品は、環境に配慮した商品として付加価値がつき、販売価格を高く設定できる可能性があります。社会面では、アップサイクルに取り組む企業姿勢を示すことで、企業イメージの向上に繋がるでしょう。
このようにアップサイクルは多くのメリットがあると言えます。
デメリット
アップサイクルは環境配慮型の取り組みとして注目されていますが、課題も存在します。まず、製品化のためには廃棄物の収集や加工に時間と労力がかかり、一般的な製造工程に比べて効率が下がることがあります。
また、素材が安定して供給されない場合、継続的な生産が難しくなる可能性も否めません。さらに、アップサイクル製品もいずれは寿命を迎えるため、根本的な廃棄物削減とは別の視点からの対策も必要とされます。
日本企業のアップサイクル事例10選
ここでは、様々な業界の日本企業によるアップサイクルの事例を10社分ご紹介します。
1.セブン&アイ・フードシステムズ

セブン&アイ・フードシステムズは、株式会社TBMおよびリコージャパン株式会社と連携し、飲食業界におけるアップサイクルの実践例を確立しました。カフェ「麴町珈琲」で使用されたメニュー表は、石灰石を原料とするLIMEXに置き換えられ、使用後はドリンクトレーへと再加工されます。
このトレーはレストラン事業「デニーズ」の店舗で再利用され、資源循環の仕組みとして機能しています。持続可能な素材活用の好例といえるでしょう。
2.ミツカン

参考:ミツカン
ミツカンは、「ZENB」ブランドを通じて、サステナブルな食のあり方に挑戦しています。特に黄えんどう豆に着目し、豆全体を活用することで、捨てられがちな皮や芯、種の部分も無駄なく使用。栄養を逃さずに摂取できる点が特徴です。
ロング麺やパスタソース、スイーツなど多彩な商品展開で、健康志向の高い人々のニーズに応えています。植物由来素材のアップサイクルという視点からも、環境と共生する食品づくりとして高く評価されています。
3.LOVST TOKYO(ラヴィストトーキョー)

LOVST TOKYOは、廃棄されたリンゴや植物由来素材を活用したヴィーガンレザー製品を展開するブランドです。環境や動物への配慮を大切にしながら、ファッションの楽しさを犠牲にしないアイテム作りを目指しています。
アップルレザーを使ったバッグや小物は、素材のストーリー性だけでなく、実用性やデザイン性にも優れており、日常に寄り添うサステナブルな選択肢として人気を集めています。贈り物としても注目されています。
4.BEAMS

参考:BEAMS
BEAMSが展開する「ReBEAMS」プロジェクトは、販売機会を逃した衣類に新たな命を吹き込むアップサイクルの取り組みです。使われなくなった洋服の素材を活かし、トートバッグへと再構築します。
パンツやコートのディテールをそのままデザインに反映すれば、唯一無二のアイテムが生まれるでしょう。このプロジェクトは、衣類廃棄の問題に向き合うと同時に、プラスチック削減や個性的なファッションの選択肢としても注目を集めています。
5.yoccattaTOKYO(ヨカッタトーキョー)

「yoccattaTOKYO」は、自動車のシートベルトや作動しなかったエアバッグを素材として再活用するアップサイクルブランドです。代表の伊藤卓哉さんが手がけるこのブランドは、不要とされていた安全装備に新たな価値を与え、実用性とデザイン性を兼ね備えたバッグを生み出しています。
中でも「ダブルハンドルトートM」は、使い方によって表情が変わる二通りの持ち方が可能です。軽さと耐久性を備えた一点ものの魅力が、利用者の心を惹きつけます。
6.島村楽器

参考:島村楽器
島村楽器は、使用不能となった楽器のアップサイクルに取り組むプロジェクトを展開しています。壊れた楽器や古い部品を再加工し、インテリア雑貨として新たな命を吹き込むことで、廃棄物削減と創造的な再利用を両立しています。
スタンドライトやサイドテーブルなど、音楽の面影を感じられる製品は、店舗やオンラインで購入可能です。また、この活動の収益の一部は、子どもたちへの楽器寄贈にも活用されており、社会貢献にもつながっています。
7.PEEL Lab(ピール ラボ)

PEEL Labは、廃棄予定だった植物や果物を活用し、植物由来のレザーを開発・販売するグリーンテックベンチャーです。主に日本、タイ、ベトナムに拠点を構え、環境負荷の低減と動物福祉への配慮を両立させた製品づくりを進めています。
中でもパイナップルの葉を使ったレザーは注目度が高く、リアルレザーに近い質感でありながら、動物を傷つけずに生まれた素材として評価されています。多様な分野での活用も期待される革新素材です。
8.RYE TENDER(ライテンダー)

参考:RYE TENDER
RYE TENDERは、アパレル製造時に出る糸くずや布の端材を活用し、新たなファッションアイテムとして生まれ変わらせているブランドです。全国各地で行われるポップアップイベントでは、ユニセックスで着られるデザイン性と実用性を兼ね備えたウェアが揃い、希少な素材を用いた一点ものも多く並びます。
廃材に補強を施すことで、見た目だけでなく耐久性にも優れ、アップサイクルの可能性を広げる取り組みとして注目されています。
9.アーバンリサーチ

参考:アーバンリサーチ
アーバンリサーチが展開する「commpost(コンポスト)」は、廃棄衣料に新たな命を吹き込むアップサイクルブランドです。カラーリサイクルネットワークとの連携により、色で仕分けた繊維を活用して素材の価値を再構築します。
バッグやスマホケースなど、実用性とデザイン性を兼ね備えた製品へと生まれ変わらせています。さらに、大阪のNPO法人との協働を通じて、就労支援にも取り組み、環境と社会に配慮した持続可能なモノづくりを実現している企業です。
10.カエルデザイン

参考:カエルデザイン
カエルデザインは、環境問題への意識を軸に、海洋プラスチックや廃棄される花を素材としたアクセサリーを制作するブランドです。海辺で集められたプラスチックごみは丁寧に加工され、個性的なイヤリングやヘアアクセサリーへと変身します。
さらに、生花店で廃棄予定だった花を使った商品も展開されており、素材の持つ自然な色彩や風合いをそのまま活かしています。ファッションを通じて地球環境への配慮を発信する、新たなサステナブルの形です。
サスティナブルなスローウエアブランド「CLALAFOR」のご紹介

「CLALAFOR」は、美しい瀬戸内海の港町で、2022年に生まれたばかりのサスティナブルなスローウエアブランドです。人体や環境に有害な化学物質を使用しておらず、倉敷染という繊維加工の安全認定も取得しています。
アップサイクル製品 例でよくある3つの質問

アップサイクル製品に関するよくある質問を3つにまとめました。
質問1.アップサイクルが注目されている理由は?
アップサイクルが広く注目されるようになった背景には、衣類やプラスチックごみ、食品ロスといった深刻な廃棄問題があります。特にファッション業界では、表地から裏地、ボタンに至るまで複数素材が使用され、それぞれの生産過程で環境負荷が発生する場合が多いです。
こうした状況に対し、廃棄物に新たな価値を加えるアップサイクルは、有効な対策として期待されています。持続可能な未来のために、資源の循環と創造的な再利用が求められています。
関連記事:アップサイクル製品の事例12選|アップサイクル製品の特徴やメリット・デメリットもご紹介!
質問2.サステナブルファッションとは?
サステナブルファッションは、地球や人々にやさしい衣服づくりを目指す取り組みです。素材選びから製造工程、販売、着用、そして最終的な処分までの全てにおいて、環境や社会への配慮が求められています。
再生素材の活用や省エネルギー生産、労働者の権利保護、さらにはリサイクルやアップサイクルの推進などが具体的な例です。また、消費者が長く着られる服を選び、適切に手放すことも持続可能な社会への大きな一歩となります。
質問3.アップサイクルの歴史とは?
アップサイクルという言葉が広く知られるようになったのは1994年、レイナー・ピルツがその考え方を提唱したのがきっかけとされています。しかしその精神は、昔から私たちの暮らしの中に根付いていました。
かつては物を修理しながら大切に使い続ける文化がありましたが、大量生産と消費の時代が進むにつれ、「使い捨て」が当たり前になっていきました。近年では、環境への配慮や資源の循環を意識した行動が求められ、再びアップサイクルが脚光を浴びています。
まとめ

アップサイクルは、廃棄物に新たな価値を吹き込み、資源の有効活用と環境負荷軽減を実現する、持続可能な社会を目指す上で重要な取り組みです。本記事では、日本企業による食品ロス削減、アパレル廃棄の再利用など、様々な分野での革新的なアップサイクル事例10選をご紹介しました。
今後の購買活動においてもアップサイクル製品を積極的に選択し、持続可能な社会の実現に貢献していきましょう。
なお「CLALAFOR」では、トウモロコシから作られた生分解性のリサイクルポリエステル素材のニットを使用し、サスティナブルなスローウエアを提供しています。⇒CLALAFOR(クララフォル)はこちら